香港からこんにちは
スイスで行われたクリスティーズ・ヨーロッパのジュネーヴ・オークションに続いて、Christie’s Hong Kong (佳士得 香港) オークションが行われました。
11月23日〜28日、場所は香港島の Wan Chai (灣仔) 地区にある Hong Kong Convention and Exhibition Centre (香港會議展覽中心) です。
毎年香港オークションの会場となる、通称コンヴェンション・センターは、国際商業展示会や国際会議、大きなセミナー、香港政府の行事やセレモニーなどにも使われる複合施設。 1997年、香港の中国返還式典もこちらで行われました。
オークションは、ジュエリー、宝石、時計、中国の古典美術や工芸品、陶器、日本美術、西洋美術、現代アート、ワイン、それに香港ならでは、Hermès のハンドバッグ (プレシャススキン素材や世界で一つしかないオーダーものデザインなど、希少価値の高いもの限定) など、各分野ごとに細かいスケジュールが組まれます。
また期間中に、クリスティーズがオークション出品物に関連する専門家達を世界中から招待し、セミナーやパネルディスカッション形式のアートトークを毎回いくつか行うのですが、 これがまた、実に大変に面白いのです。
これらはオークションの合間に行われるのですが、どこどこ大学何ちゃら教授の、机上の独断美術史講義なんかを聞くより、2000倍面白い!
なぜって? それは簡単。
ずばり!
このアートが、お金と連動しているから。
美術品オークションは、れっきとしたビジネス。出品物に関わってきた人、時間、歴史、全てひっくるめて値段が付けられ、取り引きされ、投資の対象にもなるのです。
現在進行形の美術品市場を、多角的に知り尽くしたクリスティーズのスペシャリスト達が、さらにその道のザ専門家から、時にユーモアたっぷりに引き出す話は、現実的で実用的で刺激的。
目の前のたった一枚の、百何十億という夢のような絵画から、西洋史と東洋史の点と点が繋がり、思わずポンっと膝を叩きたくなるような瞬間にも出会うのです。
そんな爽快さこそも、美術品オークションビジネスの醍醐味なのかもしれませんね。
芸術も科学も医学も、人間がやることにさほど違いはないと思っています。
どんなに崇高ぶっていても、偉そうなことを言っても、お金が直結するから真理が見える。
そんなクールで当たり前のことを気づかせてくれるのが、オークションのおもしろさなのです。
こちらは、24日に行われたヴァン・ゴッホの絵と生涯についてのパネル・ディスカッション。
左から順に、このディスカッションの司会、クリスティーズ・アジア取締役 Elaine Kwok 氏 、ヴァン・ゴッホ美術館館長 Axel Ruger 氏、クリスティーズ・グローバル会長 Jussi Pylkkanen 氏と、もう一人、ヴァン・ゴッホ美術館主任研究員 Teio Meendendorp 氏の4人で、大変興味深い話を聞くことができました。
ヴァン・ゴッホは実は画家ではなかった?!件、日本文化の持つ繊細美への憧れが強過ぎて、それを求めて南フランスへ移住した?! (けれども全然違った) 件。。。
さて今回、香港オークションのスターセールは、中国古典美術の最高峰、Su Shi (蘇軾/1037〜1101) による 「Wood and Rock」(木石圜)。
落札価格 HK$463,600,000 (約67億2千万円) なり。
Su Shi は中国北宋代の政治家であり、詩人、作家、書家、画家といういくつもの顔を持った、中国のレオナルド・ダ・ヴィンチとも呼ばれる人物です。
また、ジュエリー部門では、21石のカシミール・サファイアと、23石のダイヤモンド、合計109.98キャラットのネックレス「The Peacock Necklace」が注目されていまた。
カシミール・サファイアそのものが大変希少なうえ、21石の色をここまで揃えることのできたネックレスは奇跡に近く、こういった色揃えだけでも100年はかかるでしょう。
滑らかなヴェルヴェットの手触りを思わせるような深いブルーの輝きに、ふわっとシルクをかけたような、なんとも言えない独特の色とオーラを持つカシミール・サファイア。
見惚れるほシンプルで、見惚れるほど美しく、見惚れるほど知的な「The Peacock Necklace」。
落札価格は,、HK$116,537,500 (約16億9千万円) 。
カシミール・サファイアとしてはオークション史上、再び世界最高額を記録しました。
優れたアートや素晴らしい宝石は、限られたごく一部の才能や、自然が織りなす奇跡の積み重ねによって作られるもの。けれども、それらの作品は私達万人に開かれています。
オークションハウスを通じて受け取るもの、それは精神的な富の蓄積であり、もしかしたら、一生をかけて手に入れていく真の豊かさなのかもしれませんね。
JUN