香港からこんにちは
11月13日、スイスのジュネーヴで、世界2大美術品オークション会社の一つ Christie’s (クリスティーズ) によるラグジュアリーオークション、Magnificent Jewels (マグニフィセント ジュエルズ) が行われました。
各部門トップエンドを集めた格の高いオークションは必ずイブニングセールとなり、Magnificent Jewels は、ニューヨーク、香港、ロンドン、ジュネーヴの各都市で、毎年5月と11月に行われます。
オークションでは、毎回多くのドラマが生まれますが、今回も期待を裏切らない エキサイティングなものになりました。
18.96キャラットという稀に見る大粒の、ファンシーヴィヴィッド・ピンクダイヤモンドリング「The Pink Legacy」が、予想落札価格 $30〜50million (約34〜57億円) で出品されたのです。
この「The Pink Legacy」の出品者については、クリスティーズは徹底した守秘により、今回もプライベートオーナーとしただけで身元は一切公表していません。
分かっていることは、ロンドンに本社を置くダイヤモンド鉱山、流通、加工、卸売会社「The De Beers 」(デビアス) グループを経営する Oppenheimer (オッペンハイマー) 家が、かつて所有していたことがある、ということだけ。
希少なカラーダイヤモンドの中でも、極めて鮮やかな色合いを持つもののみに鑑定される「Fancy Vivid」というカテゴリーのカラーダイヤモンド。 それは、色付きダイヤモンド約10万個に一つとも言われています。
さらに、希少なピンクダイヤモンドで10キャラットを超えるものは極めて稀で、「The Pink Legacy」のような19キャラット近いファンシーヴィヴィッド・ピンクダイヤモンドという宝物の様な出品は、長いオークションの歴史でも過去に例がありません。
通常、目視では見えない極々小さな不純物や曇り、僅かに別のカラーが混ざっていることが多いダイヤモンドにおいて、不純物を一切含まず、ここまで高い純度と鮮度と透明度を持つ「The Pink Legacy」。
それは、この石が数億年前に地球内部で生み出された時、通常のダイヤモンドが作られる以上の高温度と高圧力が、瞬間的にであれかかったという奇跡の証明なのです。
また、ため息が出るほど完璧で美しい、クラッシックなカット。
カラーダイヤモンドにおいても、ファセット数を多くすることで、より石の輝きを引き出すよう研磨されることが多いのですが、「The Pink Legacy」は、石そのものが持つ化学的にも驚くべき純度と透明度の高さを生かしクラッシックなカットが採用されています。 それがまた、この石の奥深い色合いと相まって、洗練と品格となっているのですね。
全てが緻密に計算された最高レベルの研磨を施す、ダイヤモンドの研磨職人。 私は、この人達以上に畏敬の念を抱く人達はいないかもしれません。
「The Pink Legacy」は、人類、そして地球の「資産」と言っても、決して大げさではないと思うのです。
今回のような大きなオークションの前に必ず行われるオークションプレビュー。 ニューヨーク、香港、ロンドン、ジュネーヴという各都市で「The Pink Legacy」は、熱心なコレクターや専門家達を多いに魅了しました。
今回の Magnificent Jewels オークション会場は、レマン湖のほとりに建つ1834年築の由緒あるホテル、Four Seasons Hotel des Bergues Geneva (フォーシーズンズ オテル デ ベルグ ジュネーヴ)。
300点以上の希少なデザインジュエリー、ダイヤモンド、宝石、パールなどが出品され、「The Pink Legacy」以外にも、資産価値の高いジュエリーが数多く多く出品されました。
いよいよ、オークションも終盤。
Lot 311「The Pink Legacy」
「Lot number three hundred and eleven. Ladies and gentlemen, The Pink Legacy Diamond. At 24 million francs… 」
この夜のオークショニア、クリスティーズ国際事業責任者 ラウル・カダキア氏が、落ち着いた口調で滑らかにロット番号311の競売をスタートしました。 オークションの歴史に残る「The Pink Legacy」です。
CHF 24million (約27億円) から始まった入札は、あっという間に予想落札価格の30億円台に入り順調に上がり続け、競売開始からわずか5分。。。
会場にハンマーの音が響き渡り、大きな拍手に包まれました。
落札価格、CHF 50,375,000 (約57億円)。
キャラット単位 CHF 2,656,909 (約3億円) という、ピンクダイヤモンドについたものとしては、世界最高額での落札となりました。
落札したのは、アメリカ高級宝飾ブランド Harry Winston (ハリー・ウィンストン)。
これはクリスティーズではなく、ハリー・ウィンストン社が公表したもので、The Pink Legacy の名称はすぐさま「The Winston Pink Legacy」(ウィンストン・ピンク・レガシー) と改められ、新しい所有者に渡ったのです。
間違いなく、世界最高級のダイヤモンド「The Winston Pink Legacy」。
地球の資産とも言える「The Winston Pink Legacy」は、時代を超えて、見る者手に取る者を幸せにし、地球の奇跡が生み出した完璧な純度を持つ石の中に、人類の歴史を携えながら、これからさらにその価値は上がっていくことでしょう。
JUN