香港からこんにちは
タイムレス。
もしかしたら、この言葉ほど香港の一般的なイメージとは違うものもないかもしれません。 また、この言葉ほどイギリスのイメージを表現するのにぴったりな言葉もないでしょう。
長い年月をかけ歴史や文化、芸術を育んできたイギリス。 数百年前と同じ方法で調理された同じ味付けの食事をし、500年前に建てられた同じ校舎で学ぶ、当時から変わらない理念の学校教育。 数百年間同じ景色も田舎のランドスケープに、彼らの悠久な時間の流れ。
変わることが宿命のような香港。 変わることをよしとし、むしろ変わらないと生きていけない街かもしれません。
どんな小さな隙間でも、ビジネスチャンスを見つけては果敢に飛びつき、利益なしと見込めばあっさり転業。 見通しが悪ければ、新しい道を見つけて進むまで。
次から次へと方向転換をし、その機動力がさらなる変化を呼び込む香港は、その摩擦熱でさえ彼らのパワーであり原動力なのです。
アジアにありながら相反するものが存在する、混沌と整然の香港で、好んで使われるタイムレスな色、それは赤かもしれません。
何につけてもダイナミックなこの街で、赤色の持つエネルギーは、そんじょそこらの甘えを受け入れない強さと潔さをもって好まれます。
今でも忘れられないのが、高級ショッピングモールですれ違ったご年配女性。
杖をついてゆっくり歩く彼女の足元は、ハイヒールではなく履きやすそうな少しだけ高さのあるシンプルな靴でしたが、お化粧をし髪の毛は綺麗にセットされ、形の整えられた指先の爪に赤いマニキュア。
杖をつく指先でさえ、赤で彩る気概。 足元がおぼつかずとも、指先を赤にする意志。
ただすれ違っただけの彼女の人生は、私には知る由もありませんが、そんなカッコよくもドラマチックに年齢を重ねたいとその時思ったものです。
指には大粒のダイヤモンドリングが輝き、彼女の内面からにじみ出る、意志の強さと赤とダイヤモンドという3者の共演は、お互いに異なものが共存し高め合う、香港という街そのもののようでした。
人生の甘辛をポジティブに受け入れ謳歌するのにぴったりな赤。
ポジティブであり潔く、成熟した人にこそ似合う、タイムレスな色。
人によって街によってタイムレスの意味合いは変わるのかもしれませんが、赤が香港にとって特別な色なのはタイムレスなのかもしれませんね
JUN