香港からこんにちは
中秋節が過ぎ、都心でも少しずつ秋の気配を感じるようになってきた、9月も終わりの香港。
初夏から夏にかけては、空の真上から強く照りつけていた太陽もここにきて、ふっと力を抜いたように穏やかな陽射しに変わり、人や風景とも調和する秋色ハーモニーを作り出しているようです
世界中の人々が集まる香港には、異なる文化や価値観を受け入れる、精神的に豊かな土壌があります。 若い頃から海外で教育を受ける若者も多く、考え方も美意識もグローバル。
斬新な発想や、良いと思ったらすぐにアイディアを取り入れるスピード感とバイタリティが人を動かし、情報を動かし、変幻自在に姿を変える香港という街を動かしていきます。
大局的な強さと知性を兼ね備えたこの街の大胆さは、そのまま人々のファッションやライフスタイル、ビジネスにも反映されています。
ジュエリーの世界もそう。
デザインが個性的で華やかなのはもちろん、世界的に希少価値の高いものや財産価値、投資価値のある宝石も好まれ、代々のコレクターもいるほど。
香港は世界の金融センターというだけでなく、アート、とりわけジュエリーの世界でも、国際的に重要な都市と位置付けられています。
例えば、ヨーロッパの大手オークションハウス、クリスティーズやサザビーズが、著名人所有のプライベートセールスや、歴史的に価値のある品ばかりなどを集めた重要なセールスをする前に、世界の主要都市を周り数日限定でオークション品を展示する「プレビュー」というのを行いますが、アジアを周る際にプレビューの中心的役割を担う都市が、香港。
アジアで大きなセールスがある場合も、オークションは香港で行われます。
世界最高級クラスの宝石やジュエリーが、間近で見られるオークションプレビューには、必ずそれぞれの専門家が付き、時に、彼らから出品物の興味深いストーリーなどが聞けたりもします。
近いものでは、11月13日にスイスのジュネーブで行われる、クリスティーズのジュエリーオークション「Magnificent Jewells」。
オークションハイライトの一つで、かつてオッペンハイマーコレクションでもあった、世界的に希少な天然ピンクダイヤモンドのリング。 それが現在、香港クリスティーズでプレビュー中です。 (10/4まで)
ファンシーヴィヴィッドという、希少なピンクダイヤモンドの中でも、されに最上級クラスとなる高い彩度と濃いカラーを持ち、カットも完璧なバランス、センターストーンは18.96キャラットという、まさに至宝の極上品です。
予想落札価格は、30〜50million USドル (約36億〜56億8千万円) とのことですが、実際の落札価格はおそらく軽々とこれを超えることでしょう
歴史的価値が高かったり、世界的に重要なオークションが行われる場合は、アジアでは香港、アメリカではニューヨーク、ヨーロッパではジュネーブかロンドン、とほぼ決まっています。
そんな香港のオークションハウスで見ることのできる見事なジュエリーの数々は、圧倒的な存在感で私達に語りかけてきます。
ショウケースのその小さな空間の中に、ひっそりと佇むひとつひとつの宝石。
ですがそれらには、装飾品や芸術品としての価値と同時に、もう一つの素晴らしいストーリーがあるのをご存知ですか?
数億年前に生まれた壮大な地球の記憶を持つ、鉱物としての研磨される以前の宝石達は、多くの奇跡と膨大な時間、そして最終的に人間の情熱と才能と技術を経てやっと、今ここにその姿となり存在しているのです。
それでもきっと、私達人間が関わっているのは、その宝石の持つ記憶の中では、最も手前のほんの一瞬だけでしょう。 それだけ宝石には、遥かなる地球のエネルギーが、長い長い記憶として組み込まれているのです。
私達の想像を遥かに超える強い生命力を持ち、地球内部の膨大な高温高圧エネルギーが加わったことよって生まれた、石の鮮やかな色、彩度、透明度。
中の内包物でさえも、宝石の個性と言える唯一無二の美しさを帯びたそれらは、ひとつとして同じものはありません。
そんな宝石が記憶に持つ、地球の神秘に思いを馳せる時、なんだかワクワクしませんか?
宝石は、今ここにジュエリーとして存在していること自体が、大変な幸運を持っている証。
なぜって、それは数億年前の地球から送られてきた、奇跡であり生命の源であり、お守りなのですから
JUN