香港からこんにちは
香港島のスカイラインを形成する、金融街の高層ビル
ヴィクトリア湾を挟んだ対岸、九龍サイドから見ても、すぐ後ろに迫るヴィクトリア・ピークから見下ろしても、圧倒的な存在感と、立ち昇る龍が見えるかのような躍動感のある、国際金融都市。
と同時に、どこか不思議な静寂感もある、それは摩訶不思議な街でもあります。
古来から伝わる風水を重んじ発展を遂げてきた風水都市、香港。 何よりも「氣」の流れを大切にし、風水の考えに沿って社会が機能している伝統的な一面も、この街にはあります。
風水をないがしろにすれば、仕事も人生もうまくいかないことを直感で理解している香港人にとって、風水は生活の一部であり人生の指針でもあり、彼らのアイデンティティそのもの、といってもいいのかもしれません。
香港では、ビルや施設の設計段階で、依頼主、コンサルタント会社、設計士、風水師の意見が衝突した場合優先されるのは、200%風水師の意見。
鶴の一声ならぬ、風水師の一声が、プロジェクトに関わる頭脳明晰ハーバード級、建築構造力学オタクの数字を時にひっくり返し、大幅な設計変更をさせてしまうのですから、香港の風水信念たるや、DNAレベルで不屈
大きなプロジェクトの場合、新しい建築予算の約10%もの費用が風水に充てられるそうで、風水師へのコンサルタント料金と、実際に風水調整する時の膨大な道具・資材・人権費のためなのだそうです。
香港には、風水師のアドバイスによる設計変更、施工後の増設、改築などの風水話にはこと欠きません。 普段は鼻っ柱の強い香港人が、こと風水となると従順になり「Noと言わない香港人」に。 こんなところも、香港スタイル
簡単に設計変更、増設と言っても、親子丼に入れる葱の種類や鶏肉の量を変えるのとは訳が違います 他の箇所の設計への影響も含めて、かなりの負担なはず。
設計士はもとより、依頼主や建築エンジニア、コンサルタント会社も大変な思いをするのは目に見えているのに、それでも風水師のアドバイスを受け入れるという、風水を前にしてぐうの音も出ないハーバード達
というのはさておき、こんな話も。。。
香港島で最も賑わう繁華街の一つ、ワンチャイ (灣仔 / Wan Chai) 地区に、白い円筒型の高層ビルがあります。
ホープウェル・センター (合和中心 / Hopewell Centre) という、ショッピングセンターやオフィスを備えた複合施設です。
1980年に完成の、香港でも早期に建設された高層建築のひとつで、中国銀行タワーが完成した1990年までは、香港で最も高いビルだったそう。
ところがこのホープウェル・センター、完成後、風水師によりある指摘が。。。
ビルの外観が、キャンドル (ろうそく) に似ていることから、不運や火を連想させ不吉だというのです
風水では、火はネガティブなパワーとされており、金運やすべての福を燃やしてしまうマイナスの「氣」。
そこでどうしたかというと、ビルの持つ火のパワーに対抗するため、最上階にスイミングプールを増設。 そう、火を消すために水を用意したのです
ちなみに風水で「水」は、金運や経済的な繁栄をもたらす鍵とされている、最強の「氣」。
「風水」という概念に「水」が使われているくらい、水はポジティブなパワーで、水の設備や流れが収入や資産を増やすと言われています
ということで、ホープウェル・センター最上階のスイミングプール増設は、単純にマイナスパワーの火を消すという意味合いだけでなく、ビルの経済的発展の気運も込められていたのです。
香港の繁栄は、地理的な幸運や、早くから西欧列強と関わらざるを得なかった歴史の運などではなく、ハーバード頭脳だって敵わない、数千年前に生きたお婆ちゃんの知恵袋的古来の学問「風水」を今も守り抜く、彼らの信念によるところも、大きいのかもしれませんね
JUN