香港からこんにちは
1年の4分の3は夏、という香港。 高気温なだけでなく、雨期には湿度がほぼ100%という蒸し暑い日も続きます。
これだけ人口密度の高い香港で、それでもなぜか息苦しさを感じないのは、ここには不思議な海風がふいているからのような気がします。
ヴィクトリア・ピークのウォーキングコースでも、セントラルのスターフェリー桟橋でも、摩天楼の合間をゆくトラムの中でも、そして、街のどこを歩いていても、どこからともなく流れてくる香港の海風
それは、威圧感も閉塞感も束縛感もない、香港人のアイデンティティを象徴するかのような、自由な海風
遠く南シナ海からの空気に乗って流れてくるこの海風が、香港に足を踏み入れた人々の全てを受け入れ、アジアで最も開けた市場と、成熟した香港社会の土壌を作ってきたのかもしれません。
そんな自由な海風に誘われるように、私がよく気分転換に訪れる場所があります
スタンレー (赤柱/チェ チュウ。英: Stanley)
香港島の南東部先端に位置するスタンレー (上の赤丸) は、香港の英国入植が始まった1842年当時、香港で最も栄えていた場所だったそうです。
もともとは香港島の小さな漁村だったスタンレー。 やがて、風光明媚なこの地に魅せられた多くの西洋人実業家や富裕層が居を構えるようになり、現在は香港屈指の高級住宅地としても知られています。
豊かな自然や、地中海地方を彷彿とさせる開けた街並み、入江の静かなビーチ。 それに、穏やかな南シナ海の海風。
そこに身を置くだけで、そこを歩くだけで、心も身体もエネルギーを充電できる、そんな香港の楽園です
香港島の中心地から車で30〜45分。 地下鉄は通っていませんが、セントラル (中環) や コーズウェイベイ (銅鑼灣) からスタンレー行きの2階建バス (No.260、6X、6、6A、73、66) や、ミニバス (No.40) が約10分間隔で出ていますので、ちょっとしたデイトリップには最適です。
海岸沿いに並ぶレストランや商店は、週末ともなると、このエリアに住む富裕層の家族連れで賑わい、テラス席で海風に吹かれながらの一杯は至福の味
海風のように気ままに海岸沿いを歩くと、どこからともなく耳に心地よい波の音が聞こえてきます。
コロニアル様式の建物の横を歩いてゆくと、、、視界が開け、Blake Pier (ブレーク桟橋) が見えてきます。
1800〜1900年代にかけて、新しく就任する香港総督が英国から香港に到着する際や、英王室関係者が香港視察に訪れる時など、彼らが最初に降り立つ場所として使われていた埠頭だったそうです。
Blake Pier の先端に立つと目の前に広がるのは、遮るもののない、海と空。
この先には、、というより、もうここが、南シナ海なんですよね
170年以上前の今日も、きっと同じ色だったに違いないスタンレーの海と空、そして海風の薫り
イギリスとは気候も風土も大きく異なる、アジアのまだ未開の地であった当時の香港。 そこに降り立った香港総督をはじめとする総督府のイギリス人官僚達もきっと、今目の前に広がる同じ景色を見ながら、同じ海風を感じながら、香港に入っていったのでしょう。
濃い翡翠色の南シナ海。 そして香港の玄関口であった、スタンレーに流れてくる海風。
それが頬をかすめる時、こんなにも自由で温かく、悠然とした凛々しさも持つ、香港という街の強い生命力を感じずにはいられません。
次回は、スタンレーの街を少し歩いてご紹介しますね。 お楽しみに!
JUN