中国の人たちが最も好む宝石の一つに翡翠(Jedeiteジェダイト)があります。
古代エジプトの女王クレオパトラは、エメラルドをこよなく愛したと言われますが、同じ緑色でも中国では、3千年の昔から翡翠は「玉」(ぎょく)と呼ばれ、皇帝や時の権力者の象徴とされてきました。なるほど、「玉座」とはそのシンボルだったのですね。
中国最後の王朝、清朝末期に強大な権力を持った西太后も、翡翠を熱愛した女性として有名です。時々、クリスティーズのオークションに、素晴らしい翡翠の装身具が出ますが、もしかしたらその出所は、清朝崩壊時の混乱で散逸した西太后のコレクションだったのかもしれません。
翡翠(ひすい)という名前の由来は、青緑の羽を持つ鳥の名前の翡翠(カワセミの異称)からきたものです。ちなみにこの鳥は、雄を翡(赤)、雌を翠(緑)というのだそうです。
古来中国では、翡翠は仁、義、礼、知、信の五つの徳を持つものとされていました。翡翠を象徴する言葉は「福徳」「福財」「幸運」、だれでも望む真に最高の「福」です。
またこの宝石は、邪気を受け止めて正しく判断し、混乱から抜け出す力を与えてくれると言いますから、「魔除け」としてのパワーも強いようです。
翡翠は、緑以外に、白、ラベンダー、黄、赤など、多くの種類がありますが、中でも美しいのは、「ろうかん」と言われるしっとりとした半透明の深く澄んだ緑
色です。
ねっとりとしてとろっと固まったようなコクのある緑・・・・エメラルドのように光を反射するのではなく、逆に光を吸収し包み込むような深い色目とソフトな感触は、例えようのない美しさです。そのとろけるような美しさをじっと見ていると、いつの間にか吸い込まれていくような陶酔感を感じてしまいます。
産地は唯一、ミャンマーのみで、近年特に希少性が高まっています。硬度は、6.5~7度で、水晶よりやや柔らかいのですが靭性が高く、ハンマーでたたいても簡単には割れない程の丈夫さをもっています。なんだか、見かけはスウィートですがシンの強い淑女のようですね。
中国のある王様は、たった一個の翡翠を手に入れるために、十五の城を交換条件に出したのだとか・・・・・それほどの魅力、わかるような気がします。