香港からこんにちは
中国5000年の歴史によって培われてきた、環境学でもある風水。
中国本土では文化大革命で否定され、一時途絶えてしまった風水ですが、香港では脈々と引き継がれ、現在でも香港人の日常生活のあらゆる場面で、密接に関係しています。
街全体が世界でも最強の風水都市と言われる香港は、龍が縦横無尽に飛び交う場所と言われています。 龍とはすなわち、よい「氣」の流れのこと。
古くから龍を尊く重んじる風水では、西の方角が龍が水を飲みに来るところとされています。 古来の中国人はきっと、西の空に高く舞う龍を、幾度となく見たのかもしれませんね
香港とマカオが自動車専用の海上橋 (港珠澳大橋: 今年末開通予定。全長55kmの海上橋では世界一の長さ) で一直線に繋がることのできるこの時代、橋をかけようと思えば容易に出来るはずのヴィクトリア湾に決して橋を作らないのも、風水では、ヴィクトリア湾が九龍半島から香港島へ向かう龍の水飲み場である「龍穴」と言われているからなのです。
つまり、香港全土を自由に駆け巡る龍脈 (よい氣の流れ) を、橋によって遮断しないように、流れを滞らせないように、との風水の考えなのです。
このように、流れる「氣」を最優先に考えられ工夫された建物や施設のデザインを、香港ではよく見かけます
例えば、九龍サイドのハーバーフロントに建つホテル、インターコンチネンタル香港。
1階ロビーは、ヴィクトリア湾と香港島に向いて、床から天井まで全面総ガラス張りになっています。
香港島の摩天楼が、ガラスの向こうから迫ってくるかのようなダイナミックな景色を楽しめますが、このデザインはなにも、ホテルの観光名所狙いのためではないのです。
中国大陸からヴィクトリア湾を経て香港島に舞い込む龍の通り道を遮らないため、氣を通すためのガラス張の空間なのだそうです。
香港ディズニーランドもその一つ。
氣の流れが海に出てしまわぬよう、駅からパークエントランスまでのアプローチに、カーブが付けられています。
また、開園まであと5ヶ月と迫った最終段階に来て、風水師の龍脈関連の指摘により、エントランスの向きを当初の設計から12度動かすという、大幅な変更を決定、決行したという逸話も。
時間的に不可能と思われる無理難題でさえも、風水とあらば他所や関係者を大いに巻き込みながら、即行動しやり遂げてしまうのが香港人のパワー、そしてこれが香港スタイル
香港ディズニーランドは、ホテル、レストラン、お店のレジの配置に至るまで、風水の法則を取り入れて設計されているそうです。
他にも香港には、建物の真ん中に大きな穴が空いているものや、波打つような外観のマンションもよく見かけます。 これも単なるデザインなどではなく、流れる龍脈を遮断させないための風水設計なのです。
香港島南部の超高級住宅リゾート地、リパルスベイ (淺水灣/Repulse Bay) に建つ、高級マンション。
香港島の高級住宅街ミッドレベル (半山區/Mid-Levels)、ヴィクトリア・ハーバーの大パノラマを一望できる超ラグジュアリーな高級マンションにも龍脈のための穴が。
海の眺望が素晴らしい香港島西南部の高級住宅地、サイバーポート (數碼港/Cyberport) にある超高級コンパウンド。
などなど、建物の真ん中部分に大きな空間が開けられ、氣の流れを遮らない設計になっています。
また風水では「水=財」と扱われ、特に動の水はよい氣を集めると言われています。 地面から高く丸い形の噴水は「大成の相」とも言われ、物事が全てうまくいくとされています。
面白いことに、西洋の噴水は水が外側に向かって出ますが、風水は逆。 水を内側に向けて流すことによって、そこに富や財が集まり繁栄するというのが風水の考えなのです。
香港人にとって風水は、単なる占いやおまじないなどではありません。
中国古来から伝わる陰陽思想の中で、人々の守るべき生活ルールのようなものとして、また、物事を大局的に見るため、己がするべき努力の方向性を知るための道しるべとして、人々の人生に深く関わりを持つ、香港人の大切な不変のルーツなのです
JUN